「健康な体にメスを入れるなんて、人間のエゴではないか?」
「痛い思いをさせてまで、本能を奪うのは本当にかわいそう……」
愛犬の去勢・避妊手術を検討するとき、そうやって自分を責めてしまう飼い主様はとても多いです。
中には、動物病院の予約をしては直前でキャンセルを繰り返してしまう方もいらっしゃいます。
私たちペットホテル『まるまるハウス』は、これまで数えきれないほどのワンちゃんをお預かりし、多くの飼い主様からこの「痛み」を伴う悩みを聞いてきました。
あなたが今、手術をするかどうかを悩み、「かわいそう」と胸を痛めているのは、あなたが世界で一番愛犬を愛している証拠です。
そんなあなたに、ペットホテルの現場から見える「去勢・避妊の本当の価値」について、建前抜きの本音でお話しします。
お散歩担当ゆうきこの記事を読めば、きっと去勢・避妊に対する気持ちが楽になるはずです。



すでに愛犬に去勢・避妊手術をした人も、そうでない人も、最後まで読んでみてね!
「去勢・避妊はかわいそう」と悩むのは、あなたが愛犬を愛している証拠


手術を迷う最大の理由は、「健康な体に傷をつけることへの罪悪感」ではないでしょうか。
「言葉の通じない愛犬を、自分の判断で手術台に乗せる」という決断に胸が痛むのは、飼い主さんとして極めて正常で、優しい感情です。
しかし、ここで一つ考えてみてほしいことがあります。それは、人間にとっての「幸福」と、ワンちゃんにとっての「満足」は、少し種類が違うということです。
ワンちゃんは「将来」を後悔しない
ワンちゃんは、将来子どもが持てないことを悲しんだり、アイデンティティを失ったと感じたりすることはありません。それよりも、彼らにとって重要なのは「今、この瞬間、自分が安心・リラックスできているか」です。
「何もしない」ことが「自然で幸せ」とは限らない
人間社会の中で、繁殖をさせられない環境にありながら、「発情による強い欲求」だけを一生抱え続けさせること。それは、例えるなら「猛烈にお腹が空いているのに、目の前のご馳走を一生食べられない状態」に置かれるようなものです。
手術は、その「満たされない本能の苦しみ」から、ワンちゃんを解放してあげる手段でもあるのです。
ペットホテルの現場で見た去勢・避妊の3つの真実


当ホテルは、手術を受けている子、受けていない子、これから受けようとしている子、様々な子が利用してくれています。
結論として『まるまるハウス』は、初めて犬を飼う人、お忙しい人、小さいお子さんがいる家庭の方は、本能的な欲求の発散を行うことが難しい場合が多いため、去勢・避妊をすることをおすすめします。
その理由を、様々な子たちを見てきた私たちだからこそ言える真実として
・攻撃性
・サービスの利用制限
・病気のリスク
の観点からお伝えします。
【真実1】去勢する、しないでの攻撃性の違いは間違いなく『ある』
包み隠さず現実的なお話をさせてもらうと、去勢手術をする・しないでの攻撃性の違いは間違いなく「ある」のが、『まるまるハウス』がペットホテルを提供してきて見えてきた現実です。
攻撃性というのは、どんなわんちゃんも身を守る手段として持っています。特定の行動、原因でそのスイッチがONになり攻撃行動が出るのですが、去勢をしていないわんちゃんはそのスイッチがONになりやすいです。
まるまるハウスで実際にあったこととして
・スタッフが背を向けた瞬間に飛びついて、マウンティングしながら首を噛もうとする(支配欲)
・クレートや犬舎に近づくと攻撃しようとする(縄張り意識)
・おもちゃやエサ皿をとられまいと威嚇、攻撃する(所有欲、独占欲)
がありました。
もちろん去勢をしているわんちゃんにも見られる行動ではあるのですが、去勢をしないことでこういった支配欲、縄張り意識、所有欲が表に出やすくなる傾向があります。
しかし、『攻撃性が出やすいからだめ』ということでは決してありません。
そこも含めて、人がリーダーシップを発揮してコントロールできるようにしていくことが大切です。
実際に去勢をしていなくても、穏やかに過ごすことができているわんちゃんがいることを私たちは知っています。その子たちはその攻撃性を覆すくらい、充実した生活を送ることで発散、解消されています。
【真実2】去勢・避妊をしていないことでサービスを受けられないことがある
ペットホテル、有料ドッグラン、ペット同伴施設では、残念ながら去勢・避妊をしていないと利用させてもらえない場合があるのです。
まるまるハウスでは、去勢・避妊手術をしていないというだけで最初からお断りということはしていませんが、それでも、予約状況によってはご案内ができないことがあります。
去勢・避妊をしていないわんちゃんは、独特の強い匂いやフェロモンを発し、これが他のわんちゃんを刺激することでトラブルに発展しやすいという側面があります。
去勢・避妊手術をすることで、今まで選択肢として選べなかった場所についても行けるようになり、わんちゃんの体験の機会が増える、一緒に楽しめるイベントが増えるのです。
これは、わんちゃんの社会的な幸福度に直結します。
【真実3】去勢・避妊をしていないと病気になりやすいは半分ウソ
メスのわんちゃんであれば「子宮蓄膿症」、オスのわんちゃんであれば「前立腺疾患」など、性ホルモンが関連する病気は高齢になると発生しますが、去勢・避妊をしていないからと言って必ずなるということではありません。
それよりも、『ストレスを与え続けないこと』『栄養に偏りのない食事』『運動、遊びによる充分な発散』の方が体への影響が大きいです。
じゃあ、去勢・避妊は関係ないの?というとそうではありません。
去勢・避妊をしていないことで強く出る『繁殖したい、子をなしたい』という欲求はすさまじく、それを抑えるというのは私たちが思っているよりずっと過酷で、ストレスがかかるということは、知っておかなくてはいけない事実です。
去勢・避妊をすることで本能的な欲求が抑えられ、ストレスがかかりにくくなるということが、結果的に健康を守ることにつながります。
ただ、去勢・避妊が解決方法の全てではありません。
『運動、遊びによる充分な発散』でストレスを軽減し、『栄養に偏りのない食事』で病気に負けない強い体を作ることが大切ですので、去勢・避妊をすれば全てOKではないことは知っておいてほしいです。
目を背けずに知っておきたい「デメリット」


お世話のプロとして、良いことばかりを言うつもりはありません。去勢・避妊手術には必ずデメリットと変化が伴います。
【デメリット1】性格が「穏やか」を通り越して「臆病」に見えることも
手術後、見違えるほど落ち着く子がいます。「元気だったのに、急に大人しくなってかわいそう」と感じるかもしれません。
しかし、これは「無理に強がらなくてよくなった姿」でもあります。
- 去勢前: 怖い → 闘争本能が勝つ → 吠える・噛む
- 去勢後: 怖い → 本能的な怒りが抑えられる → 飼い主さんの後ろに隠れる
このように、闘争心が消えることで「飼い主さんを頼る行動」が増えるのです。
これは絆が深まるチャンス。優しく受け止めてあげてください。
【デメリット2】肥満になりやすい
「手術をすると、性ホルモンの減少により基礎代謝が20〜30%ほど低下します。
「今までと同じ食事量=食べ過ぎ」になるため、工夫が必要です。
- フードの見直し: 去勢・避妊後専用の低カロリーフードに切り替える。
- 満足度を下げない工夫: おやつを「量」ではなく、知育玩具などを使って「回数」や「時間」で楽しませる。
- 運動の質の向上: 距離を歩くだけでなく、ドッグランでの自由運動や遊びの時間を取り入れる。
肥満は関節炎や心臓病を招きます。健康管理を徹底すること自体が、愛犬への深い愛情表現になります。
【デメリット3】手術なのでリスクがある
全身麻酔を伴う手術である以上、リスクはゼロではありません。ですが、現代の獣医学において去勢・避妊手術の安全性は非常に高く確立されています。
「もしものことがあったら……」という不安を抱えるよりも、信頼できる獣医師さんと納得いくまで話し合うことが、その不安を解消する唯一の道です。
当ホテルでも、提携先の動物病院での事例や、術後の変化について情報共有を行っていますので、不安な方はいつでもお声がけください。
プロが本音で回答!「手術をしない」場合に飼い主が守るべきこと


あなたが悩んだ末に「どうしてもメスを入れたくない」という道を選ぶなら、それもまた一つの深い愛の形です。私たちはその選択を否定しません。
ただし、厳しいようですが一つだけお伝えしておきます。 手術をしないということは、「自然なまま=楽をさせる」ということではありません。むしろ、「自然なまま=飼い主が一生責任を持って本能をコントロールし続ける」という、非常に難易度の高い道を選んだということです。
手術をしない場合に守るべき、具体的な「5つの責任」を整理しました。
① 本能的な「欲求不満」を解消する責任
手術をしていないワンちゃんは、常に性ホルモンの影響で「子孫を残したい」「縄張りを守りたい」という強いエネルギーを秘めています。
- 運動量の確保
通常のお散歩だけでは足りません。ドッグスポーツやアジリティなど、心身ともに疲れ果てるまで発散させる機会が必要です。 - 知的な刺激
脳をフル回転させるトレーニングを行い、本能的なイライラを別のエネルギーに変換させてあげる必要があります。
② ヒート(発情期)の徹底的な管理責任(メスの場合)
メスのワンちゃんの場合、年に1〜2回のヒートが訪れます。
- 外出の自粛
ヒート中およびその前後は、ドッグランやカフェへの出入りは厳禁です。数キロ先のオス犬が匂いを察知して興奮してしまうため、近所のお散歩もコースや時間帯に細心の注意を払わなければなりません。 - 出血への対応
室内が汚れないようパンツを履かせたり、衛生管理を徹底する必要があります。
③ オス犬の「逸走(脱走)」と「興奮」対策の責任
オス犬は発情中のメスの匂いを感じると、普段は従順な子でも指示が全く通らなくなることがあります。
- 逸走防止
リードの二重持ちや、フェンスの強化など、絶対に脱走させない物理的な対策が必須です。 - 過度なマーキング対策
室内外を問わず、強い縄張り意識による排泄行動が出やすいため、マナーベルトの着用や徹底した清掃が求められます。
④ 社会的な「マナー」と「周囲への配慮」の責任
公共の場において、未手術のワンちゃんは他の犬から警戒されたり、逆に興奮させてしまったりする「きっかけ」になりやすいです。
- トラブル回避
相手の飼い主さんに「未手術であること」を伝え、距離を保つなどの配慮が欠かせません。 - 施設ルールの遵守
「未手術犬NG」の施設に隠れて入るようなことは絶対にしてはいけません。利用できる場所を事前に徹底的にリサーチする手間を惜しまないでください。
⑤ 病気の「早期発見」のための健康診断責任
手術で防げたはずの病気(子宮蓄膿症や精巣腫瘍など)のリスクを抱え続ける以上、早期発見が命綱となります。
- 定期検診の義務
年に1〜2回の健康診断だけでなく、エコー検査などを追加して生殖器の状態を常にチェックしてください。 - 毎日のボディチェック
乳腺に小さなしこりはないか、陰部から異常な分泌物はないか、飼い主さんが毎日触って確認する習慣が不可欠です。
このように、手術をしないという選択は「愛犬の欲求とリスクを、飼い主がすべて肩代わりして管理する」という覚悟が必要です。
【チェックリスト】手術前後に準備しておくべきこと


手術を決断された飼い主様が、少しでも安心して当日を迎えられるよう、準備リストを作成しました。「不安」は具体的な「準備」をすることで、少しずつ「安心」へと変わっていきます。
手術前の準備(当日を笑顔で迎えるために)
- 信頼できる病院選びと質問リストの作成
不安なことはすべてメモして医師にぶつけましょう。丁寧に答えてくれる医師なら、当日の信頼感も高まります。 - 術前検査の実施
血液検査等で、麻酔に耐えられる健康状態か事前にチェックします。 - 絶食・絶水のルール遵守
「少しだけならいいかな」という油断が、麻酔中の事故につながります。心を鬼にして守りましょう。 - スケジューリング(術後2〜3日の確保)
手術当日と翌日は、可能な限り飼い主様がそばにいてあげられる日を選んでください。あなたの声が聞こえるだけで、ワンちゃんはどれほど安心することか。 - 手術前日の「特別なシャンプー」
手術後はしばらくお風呂に入れません。前日に体を清潔にし、たっぷりとスキンシップを取ってあげてください。
術後のケアと環境づくり(愛犬の回復を支える)
- エリザベスカラーまたは術後服の準備
最近は、首への負担が少ない柔らかいカラーや、おむつのように着脱しやすい「術後服」が主流です。事前に試着して慣らしておくとスムーズです。 - 静かで段差のない安心スペース
術後は足元がおぼつかないことがあります。ケージの中や、段差のないリビングの一部を、ふかふかのタオルで「特別室」にしてあげましょう。 - 消化に良い食事と水分補給の工夫
麻酔の影響で食欲が落ちることがあります。ふやかしたフードや、お肉のゆで汁など、喉越しの良いものを用意しておきましょう。 - 緊急連絡先の確認(夜間病院等)
万が一、夜間に体調が急変したとき、どこに電話すべきかメモして冷蔵庫に貼っておくだけで、心の余裕が全く違います。 - 飼い主様の「笑顔」と「落ち着き」
これが一番重要です!あなたがオドオドしていると、ワンちゃんは「大変なことが起きたんだ!」と察知してしまいます。「お疲れ様、頑張ったね」と、いつもの穏やかな笑顔で接してあげてください。
よくある質問(Q&A)


Q:いつ頃手術をするのがベストですか?
A:一般的には生後6ヶ月〜1歳頃(初めての発情前)が推奨されます。 この時期に行うことで、病気の予防効果が最大化され、マーキングなどの行動も定着しにくくなります。ただし、個体差があるため必ず獣医師に相談してください。
Q:何歳まで手術は可能ですか?
A:健康状態に問題がなければ、シニア期でも可能です。 ただし、年齢が上がるほど麻酔のリスクは高まります。病気の治療として行うよりも、予防として体力が充実している若いうちに行うのが理想的です。
まとめ:あなたの「かわいそう」を「安心」に変えるために


今、あなたが悩んでいるのは、愛犬との10年後、15年後を真剣に見据えているからです。
- 攻撃性について
- ストレスについて
- リスクについて
様々な観点から記事を書きましたが、やはり最終的な決断は飼い主さん本人にゆだねられます。
今回の記事を読むことで少しでも「かわいそう」という思考から「より良い未来をつかむための決断」として去勢・避妊のことを考えてくれるとうれしいです。
手術室へ見送る瞬間の寂しさは計り知れません。でも、その数日間の療養を乗り越えた先には、ホルモンのイライラから解放され、病気のリスクが減り、より多くの場所へ一緒に行ける「もっと自由な生活」が待っています。
『まるまるハウス』は、そんな飼い主さんの決断を応援しています。 手術前後のナーバスな時期の過ごし方や、退院後の体調管理など、困ったことがあればいつでも頼ってください。
10年後、白髪が増えた愛犬の頭を撫でながら、「あの時決断してよかったね」と一緒に笑い合える未来を。私たちはそのお手伝いをしたいと思っています。











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